■「経営者の人生」を考えることの重要性
社長自身がつくり上げてきた事業や、先代から継承した事業をどう引き継ぐのか…。
これは、社長にとって最大の悩みではないでしょうか。
事業承継するのであれば、
誰かに会社を引き継いでもらう、M&Aで売却してしまう、
といった選択肢になるでしょう。
もし継承者が見つからず、事業の売却も不調に終わった場合は、
会社自体を手仕舞いすることも考えられます。
このように事業承継を考える一方で、
社長がご自身の人生をどのように送っていくのかを考えるのも、
重要なテーマですよね。
現代は、社長の勇退について、
事業承継に関する情報はネット上にたくさんありますし、
書籍も豊富に出版されています。
ところが、「経営者の人生」を考えるための情報となると、
ほとんど見ることがありません。
「公人」の立場である社長にも、それぞれの人生があります。
事業の先行きを考え、利益をあげて、
従業員の人生を預かる重責を担う経営者の人生を、
ないがしろにしていいはずがありません。
ただ、「そう言われても、どこから考えていいのかさっぱりわからない…」
という方は少なくないでしょう。
そういった方は、次の手順で考えていくことがおすすめです。
■人生の残り時間を可視化する「人生メーター」
ここでご紹介する「人生メーター」とは、
あなたの人生の残り時間を把握するためのツールです。
まず、紙とペンを用意してください。
下の図のようなスケールを用意し、
これまで過ごしてきた人生の時間を塗りつぶします。
そして、あなたが将来いつ亡くなるのか、時期を決めます。
もっとも、人がいつ亡くなるかなど、誰にもわかりません。
そのため、
①日本人の平均寿命
②任意の年齢
こういったものを目安にするといいのではないでしょうか。
①の平均寿命で考えれば、
WHO(世界保健機関)が発表した世界保健統計2023年版によると、
日本人の平均寿命は男女合算で約84歳です。
もしくは②を選んで、
たとえば「わたしは90歳まで生きる」とするのであれば、
90歳を亡くなる年齢としましょう。
亡くなる年齢を決めたら、亡くなった以降の部分を塗りつぶします。
このようにすることで、残りの時間がどれほどあるか、把握できるのです。
たとえば、現在60歳の経営者が平均寿命で亡くなるとすれば、
残りは24年ということになります。
こうしたビジュアルで見てみると、
「意外に少ないな…」と思う人もいるはずです。
■人生の残りの時間を意識することで見えてくるもの
よく、「最期は亡くなるまで元気で、ある日突然亡くなる『ピンピンコロリ』がいい」
と言う声を耳にします。
でも、そのような形で亡くなる方ばかりではありません。
「健康寿命」という言葉を聞いたことはありますか?
健康寿命は、WHOが2000年に提唱した新しい指標です。
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」
と定義されています。
つまり、「自立して健康に過ごせる期間」の平均であり、
病気などで介護や支援を必要としている期間は健康寿命に加算されません。
WHOによれば、日本人の健康寿命は約74歳であり、
世界第1位ではありますが、
注目してほしいのは平均寿命と健康寿命の差です。
前者が84歳、後者が74歳なので、
おおよそ10年ほどの不健康期間があることになります。
何らかの病気にかかったりして、
10年ほど健康面で何かしらの問題を抱えながら
生活を送ることになるということです。
ですから、本当に気力と体力が充実して好きなことができる期間は
75歳前後までと考えられます。
平均寿命にせよ任意の年齢(90歳など)にせよ、
はたまた健康寿命にせよ、それが何歳までなのか期限を決めれば、
残りの期間はそれほど長くないことがわかるでしょう。
さらに、もし60歳の社長が健康寿命に近い75歳を期限として設定した場合、
残りの15年間で行わなければならないことが
たくさんあることに気づくはずです。
非常にシンプルな作業ですが、人生の残りの年数を把握することで、
その間に何をしなければならないのか、明確になるのではないでしょうか。
まずは、人生の残り時間を知ることが、
ご自身の人生を真剣に考える第一歩なのです。
この時間のなかで、経営者としてすべきこと、
ひとりの人間としてすべきことは何なのか、
しっかり考えることが大切です。
社長として有意義な人生を送るためにも、今一度振り返ってみませんか?
『社長の資産を増やす本』(星野書房)
好評発売中!