■理解しておきたい「在職老齢年金」の仕組み
「社長の年金は特別だと聞くけれど、正直なところよくわからない…」
「別に年金をもらえなくてもいいかな…」
こういった想いで過ごしている社長も多いのではないでしょうか。
社長の公的年金に関して絶対に忘れてはいけないことは、
在職老齢年金です。
在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受給している会社員や会社役員が、
厚生年金と給与を併せて一定額以上の収入を受け取っているときに、
厚生年金の一部、もしくは全額が支給停止になる制度です。
具体的には、「基本月額(老齢厚生年金のうち、報酬に応じて計算される部分の月額)」に
「総報酬月額相当額(標準報酬月額+年間の賞与額÷12)」を加えた金額が
50万円(令和6年度=2024年度)を超えている場合、
その超えた金額の2分の1が、厚生年金から差し引かれる、というものです。
ですから、仮に基本月額が15万円、
役員報酬月額が60万円(総報酬月額相当額が59万円)とすれば、
(15万円+59万円-50万円)÷2=12万円が支給停止となり、
厚生年金は月3万円になります。
これが、役員報酬月額100万円(総報酬月額相当額65万円)とすれば、
(15万円+65万円-50万円)÷2=15万円ということで、
厚生年金は全額支給停止となるのです。
定年後に再雇用されるサラリーマンが、
支給停止のラインである50万円を超えることは稀であり、
たとえ超えたとしても厚生年金が全額支給停止になることは滅多にありません。
でも、高額な役員報酬を得ている社長であれば、
全額支給停止になる可能性があります。
-scaled.jpg)
さらに、厚生年金保険料の支払いが終わる70歳を超えても支給停止は続くため、
社長である間は厚生年金を受け取れないケースが非常に多いのです。
しかも、厚生年金がもらえないにもかかわらず、
70歳まで年金保険料を納めなければなりません。
こうした背景から、
「社長の年金は特別」「社長は年金で損をする」
と言われているのです。
なお、前回のブログで触れていた
「社長は年金を繰り上げても意味がない」理由は、
60歳であればまだまだ現役真っ只中であり、
在職老齢年金の制度で全額支給停止になることが予想されるからです。
60歳まで繰り上げたことで、
もらえる額が7割に下がったうえに支給停止になるのであれば、
まったく意味がありませんよね。
社長が勇退後に年金を受け取る場合、
7割に減額された年金を一生受け取らなければなりません。
このような状況になってしまうと、
とてももったいないことだと思いませんか?
そのため、「年金の繰り上げ」は、
社長の年金の受け取り方としてはおすすめできないのです。
社長の年金を受け取る際には、在職老齢年金も考慮して、
年金の受給方法の4つ選択肢を検討することが重要になります。
次の図の4つのパターンのうち、
どの方法で年金を受け取るかを
65歳になる前から考えることがポイントです。
後悔しないためにも、しっかり仕組みを理解して、
早めに適切な対策をとっていきましょう。
65歳からの年金のもらい方(4パターン)-scaled.jpg)
『社長の資産を増やす本』(星野書房)
好評発売中!
